静磁気学についての概観

基本法則

静磁気学というのは時間的に変化しない電流間の力を求める学問です。電流の時間変化がないということは電流は閉電流をなしているということです。静磁気学の基本法則は微小電流間の力の法則、ビオ・サバールの法則です。式で書くと

ビオ・サバールの法則は普通は磁場を求める法則なので少し違いますがいいでしょう。ちなみにこの力は作用反作用の法則を満たしていません。k_qはクーロンの法則の比例定数です。これはマクスウェル方程式の時間微分を0とした式

と同等です(私自身は証明したことはないですがおそらく同等でしょう)。静電気のクーロンの法則は単純明快でマクスウェル方程式など不要だと思うのですが、静磁気に関してはマクスウェル方程式のほうも磁場のイメージがでて役に立つと思います。それからベクトルポテンシャルの式

で、時間変化をなくして、回転を取れば出てきます。まあ、いろんな表現があるのですが、ビオ・サバールの法則が最もわかりやすいでしょう。静磁気学はこれでおしまいです。

磁石

少し、磁石と閉電流との関係について触れましょう。磁石間の力にも逆2乗の法則が成り立ちます。式は

です。k_jは比例定数。磁荷の量の定義によって決まってきます。磁荷の量は単に物質に比例して増えていくとして定義するわけです。ここでは細かい話はやめましょう。

一方円柱の横面に面電流密度Jが流れているとき、円柱間の力も

と表せます。この式をちょっと説明すると、円柱のうわ面に面密度Jがあり下面に面密度ーJ があり、それがもう一方の円柱と逆2乗の法則で力を及ぼし合っているということです。だから磁荷の量を電流密度と等しいと定義すれば磁石と閉電流はまったく同じ現象を表すわけです。教科書にはあまり磁石や磁荷という話がでてこないので少し触れてみました。磁荷と閉電流の等価性というのは純粋に数学的な定理です。

ビオ・サバールの法則を確立した実験

ビオ・サバールの法則を確立した実験はアンペールとビオとサバールが行ったようです。矢島裕利氏の電磁気学史(岩波全書)に実験のことが出ています。このホームページでは実験の詳細が出ています。まず、ビオ・サバールの法則が成り立つと仮定して、実験的に確かめたようです。まあ、そりゃそうでしょう。クーロンの逆2乗の法則も予想されたものを確かめたわけで、それと同じです。力が電流の強さに比例するというのは力の重ね合わせの原理からの当然の帰結で、それを確かめたかどうかは不明です。