種類株式

昔の商法では、株式は平等に扱わねばならなかった。今の会社法では定款で定めておけば、様々な種類の株式を発行することができる。例えば、ある株式は議決権を持たないが、配当は他の株式より多くもらえるということも可能である。種類株式の内容は定款で定めなければ効力を有さず、登記簿にも記載される。株式会社は、どんな種類の株式でも発行可能かというと、そこまで自由ではなく、法律により9つのテーマについてのみ自由が認められる(108条①)。列挙すると

定款に何も書かれていなければ、1,2についてはすべての株式が平等であり、3~9については、そのようなものは存在しないということになる。以下個々に説明すると
(1について)
本来なら配当はどの株式にも平等に分配されるが、定款で定めておけば、例えば、A株式とB株式の2種類の株式を発行していて、A株式の配当はB株式の配当の2倍とするというように決められるということである。
(2について)
残余財産とは会社が解散した時に残っている財産のことである。 本来なら残余財産の分配はどの株式にも平等に分配されるが、定款で定めておけば、例えば、A株式とB株式の2種類の株式を発行していて、A株式への残余財産の分配ははB株式の分配の2倍とするというように決められるということである。
(3について)
本来なら、すべての株式はどんな話題についても議決権を持つが、定款で定めておけば、ある株式はある事項について議決権を持たないようにすることができるということである。例えばA株式は定款の変更に際して議決権をもたないという定めも可能である。
(4について)
本来なら株式の譲渡は自由だが、定款で定めておけば、ある株式については会社の承認を要するという条件をつけられるとういうことである。
(5について)
本来なら株主は株式を会社に買い取ってもらう権利はないが、定款で定めておけば、ある特定の株式にはその権利を与えようということである。前もって買取対価を定めておかなければいけない。これは現金に限らず、社債でもよいし、他の種類株式でもよいし、他の財産でもよい。 条文をみるかぎり、具体的に価格を決めなくても算定方法を定めておけばよいようである(108条②5イーロ、107条②2ロ―ホ)。 例えば、買い取る時の東京証券所での価格というようにしてもよいということであろう。 又、買い取ってもらえる期間もあらかじめ定めておかなければならない。
(6について)
本来なら会社は強制的に株主から株式を買い取る権利はない。当然である。ところが定款で定めておけば、ある特定の株式はある条件のもとに会社が強制的に買い取ることができるようにすることが可能だということである。 これは、会社が一方的に株主から株主の地位を奪うというものである。例えば平成23年1月10日に株式を買い取ることができるとその株式に定められていれば、それの株主は強制的にその株を会社に売らなければならない。この買い取るだが、条文をみるかぎり、「取得することができる」(108条①6)となっているので、買取請求権があるのみで、その条件が生じても、必ずしも実際に買わなくてもよいのであろう。当然、あらかじめ買取対価を定めておかなければならない。また、会社のほうは、この種類の株式の一部を買い取ってもよい。このこともあらかじめ定めておかなければならないし、その決め方も、例えば抽選によりというように定めておかなければならない。
(7について)
定款で定めておけば、株主総会の特別決議によって会社がその定めのある株式をすべて買い取るということである。一定の事由ではない。この場合もあらかじめ価格や価格の決め方を具体的に定めておかなければならないと思うのだが条文を読む限りそこらへんがよくわからない。108条②7イで、そういう趣旨のことが書いてあるが、171条①1をみると買取を決定した株主総会で価格を決めればよいということになっている。
(8について)
定款で定めておけば、ある株式を持った集団(種類株主総会)に拒否権をもたせることができるということである。例えば、支店の設置の決定は取締役会の専権事項だがこの種類の株式をもった人たちのみの株主総会での承認を要するとように決められるということである。
(9について)
取締役、監査役は本来なら株主総会で選ばれるが、定款で定めておけば、これをある株式を持った人たちからなる株主総会で選出しようという意味である。国政選挙で言えば全国区に対する地方区選出というのに対応している。ある株主集団の利害を代表する人を取締役に送り込むの が趣旨だろうか。

合併

株主総会の決議要件

公開会社

種類株式

取締役会

配当

株式会社の解散・清算

業務執行役員