株式会社の設立方法

会社を設立をするとは、法務局に書類を提出して登記してもらうことです。つまり、役所の 帳簿に登録してもらうことと考えればいいと思います。実際に営業しているとか、団体として組織が あるとかとは全く関係ありません。ただ道義的にも法律的にも幽霊会社が許されるというわけではありません。実体のない会社を作れば刑法157条の【公正証書原本不実記載罪】となり5年以下の懲役、又は50万円以下の罰金となります。実体のある会社を作りましょう。

会社設立の参考書は本格的なものから一般向けまで 沢山出版されていますが、【河野順一著、株式会社を作るならこの一冊】は読みやすくわかりやすい本だと思いました。本格的なものとしては【日本法令の商業登記の手続き】 もいい本だと思いました。 日本公証人連合会や法務省の商業・法人登記申請も参考になります。

ここでは例として山田太郎さんが一人で会社を設立する場合の手続き、必要書類を以下に説明していきます。会社は法人であり、法人ということは団体なわけですから、構成員が一人ということは本来おかしいのですが、法律上認められています。尚、一般社団法人では最低でも二人の構成員が必要です。

今の場合、会社の構成員は山田太郎さん一人です。つまり山田さんのみが出資して株式会社を作ります。出資者を株主といい、法律用語では社員ともいいます。法律で社員というのは法人の構成員のことであり従業員のことではありません。株主である山田さんは会社を運営する経営者つまり取締役をしてくれる人を探します。今の場合山田さんが自分自身を経営者つまり社長に選んだとします。ほとんどの中小企業が株主兼社長だと思います。社長というのは法律用語ではなく、法律では代表取締役といいます。それでは会社設立(帳簿に載せてもらう)のに必要な書類を解説します。必要な書類は以下の通りです。

  必要書類一覧


定款            3部

印鑑証明書         2部

払込金額が示された
預金通帳のコピー      1部

払込証明書         1部

登記申請書         1部

フロッピーディスク(CD) 1枚

印鑑届出書         1部

以下書類の説明をします。

定款

定款とは、団体を作る時の団体を運営するにあたって作る会社の基本規則です。多人数で団体を運営していくなら、こういう規則も必要でしょう。が、団体員が1人なので実際のところ運営の規則もなにもありません。しかし、この定款を作らなければ会社は設立できません。発起人全員の合意でつくります。

定款には以下のことを必ず記載しなければなりません(会社法27条、37条)。これらの記載がないと会社は作れません。絶対的記載事項といいます。

【目的】 会社が何を行うかを書けばよいです。文房具なら文房具の販売とすればよいでしょう。
【商号】 商号の中に株式会社の文字を必ず入れなければなりません。またまぎわらしい商号はやめましょう。有名企業の商号などはやめた方がいいでしょう。近所に似た商号がある場合もやめた方がいいかもしれません。
【本店の所在地】 郵便物が届くように書きましょう
【出資額】 100万円出資するなら100万円と書けばよいだけです。
【発起人の氏名、住所】 発起人とは最初の株主のことで、今の場合、山田太郎さんの住所、氏名を書きましょう。
【発行可能株式総数】 何株と書いてもいいですが、最初に発行する株式の数よりは多く書かなければなりません。尚、株式は実際に株券を発行する必要はなく帳簿に山田太郎: 100株とつけておけばいいだけです。こういう小さい会社の場合、発行可能株式総数というのは意味のない条項だとおもいます。

会社設立に際し必ず記載しなければならないことは、以上なのですがその他に

当会社の株式を譲渡するには、当会社の承認を要する。

という譲渡制限のの条項をいれておきましょう。これを書かないと会社は公開会社とみなされ、取締役を3人以上、監査役を1人以上雇わなければならなくなります。また

取締役の任期を10年

という条項もあったほうがいいでしょう。取締役の任期について何も書かなければ、任期は2年となります。もちろん、山田太郎さん1人株主の会社なので2年ごとに形式上の株主総会で自分自身を取締役に選べばいいわけですが、その際、役員変更の登記申請を行わなければなりません。登記申請に登録免許税として1万円かかりますし、何といっても面倒です。任期は最長10年にできます。

以上を考慮して簡素な定款を作りますと

山田商店株式会社定款

(目的)
1.当会社は文房具の販売を目的とする。

(商号)
2.商号は山田商店株式会社とする 

(本店の所在地)
3.本店は名古屋市昭和区永田町1番地に置く (*1)

(発行可能株式総数)
4.発行可能株式は1000株とする。

(株式の譲渡制限)
5.当会社の株式を譲渡するには、当会社の承認を要する。

(取締役の任期)
6.取締役の任期は選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の ものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 

附則

(発起人)
1.発起人 名古屋市新宿区栄一丁目12番地 山田太郎
(設立時取締役)
2.上記発起人を設立時取締役とする。
(設立に際して出資される財産の額)
3.出資額は金100万円 。引受株式は100株とする。(*2)
(設立時資本金の額)
4.出資額金100万円はすべて資本金として計上する。(*3)

平成22年3月1日 山田太郎 実印(*1)

(*1)発起人の実印を押してください。
(*2)1株の金額はいくらでも構いませんがわかりやすいように1株1万円にしました。
(*3)出資金の1部を資本準備金にすることもできますが、今の場合必要ないでしょう。出資金=資本金でいいと思います。

日本公証人連合会ホームページに定款の記載例があるので、それを使えばいいと思います。法務省の 商業・法人登記申請には会社設立(設立登記申請)に必要な見本一式があります。尚、定款は、株主総会の決議(今の場合山田太郎さんの意思)によって変更できます。

印鑑証明書

市町村長が発行した山田太郎さんの印鑑証明書です。印鑑登録してない場合は登録しましょう。

定款3部と発起人(山田太郎)の印鑑証明書1部、認証料5万円+収入印紙4万円+少々をもって、公証人役場で認証を受けます。

払込金額が示された預金通帳のコピー 

一人で会社を起こす場合でも発起人名義に出資額の払いこみをしなければなりません。上記例では100万円を山田太郎さんが山田太郎さんの口座に振り込みます。振り込まれた通帳のコピーは登記申請時に提出します。

払込のあったことを証する書面

法務省のホームページによると次のようなものになります。

証明書

当会社の設立時発行株式については以下のとおり、全額の払込があったことを証明します。

設立時発行株式数 100株

払込を受けた金額 金100万円

平成22年3月11日 
山田商店株式会社  設立時代表取締役 山田太郎 届出印(*1)

(*1)法務局に会社の印鑑を登録しますので、会社の印鑑を作って、それを押してください。インターネットの注文2000円程度でできます。。

登記申請書

法務局(登記所)に提出する申請書本体です。

株式会社設立登記申請書


商号		山田商店株式会社

本店		名古屋市昭和区永田町1番地

登記の事由	平成22年3月15日発起設立の手続き終了

登記すべき事項 別紙FDのとおり

課税標準金額  金100万円

登録免許税   金15万円

添付書類    
        定款      	1通

		印鑑証明書		1通

		払込証明書		1通

		設立時取締役の就任を承諾する書面
		定款の記載を援用する。

		発起人全員の同意を証する書面
		定款の記載を援用する。


上記のとおり登記の申請をします。

  平成22年 3月20日 名古屋法務局御中

				
名古屋市昭和区永田町1番地 申請人 山田商店株式会社

名古屋市新宿区栄一丁目12番地 代表取締役 山田太郎 届出印

連絡先の電話番号 052-444-5555

これに収入印紙15万円分をはりつけます。

フロッピーディスク(CD)

ここに登記簿に載せてもらう事を記載します。フロッピーディスク(CD)をテキストファイルで以下のように作ります。

「商号」山田商店株式会社

「本店」名古屋市昭和区永田町1番地

「公告をする方法」官報に掲載してする

「目的」文房具の販売

「発行可能の株式総数」1000株

「発行済株式の総数」100株

「株式の譲渡制限に関する規定」
当会社の株式を譲渡するには、当会社の承認を受けなければならない。

「役員に関する事項」

「資格」取締役

「氏名」山田太郎

「役員に関する事項」

「資格」代表取締役

「住所」名古屋市新宿区栄一丁目12番地

「氏名」山田太郎

「登記記録に関する事項」設立

印鑑届出書

会社の印鑑を作らなければなりません。それを法務局に届出ます。銀行に口座を開設するときも 銀行印を銀行に届け出るのと同様です。これも、法務省のホームページから取ってきたものですが。

あとは、これらの書類

  • 定款
  • 払込証明書
  • 預金通帳のコピー(出資金100万円振り込んだもの、払込証明書の一部として)
  • 印鑑証明書
  • 登記申請書 (収入印紙15万円貼り付け)
  • フローピーディスク(CD)
  • 印鑑届出書

を本店の管轄法務局に提出して登記簿に載せてもらえば会社設立完了です。名古屋法務局管内の管轄地域は管轄区域一覧で調べられます。
【追記】余分なことですが、会社法については、私が作った会社法用語集も参考にしてみてください。

★ 株式会社の設立方法

★ 合同会社設立

★ 合資会社設立

★ 合名会社

★ 一般社団法人設立

★ 一般財団法人設立

★ 会社の税金

★ 会社関係の登録免許税