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【熱学演習―熱力学、原島鮮著、裳華房】の思いで

私は物理を勉強するにあたって熱力学や統計力学に並々ならぬ関心があったと思う。普段身近に起きている現象を理解したかったのだ。今でも覚えているが、黒体放射というものを知ったあと、私はストーブを消してみた。ストーブを消すとすぐ鉄芯の赤色はなくなり黒くなる。がそれでも顔を近づければ暖かい。そこで顔の前にノートを置いてみた。するとその温かさは消えた。そうか、このストーブの暖かさは電磁波何だと思って感動したものだ。顔が暖かいのはストーブによって空気が暖まったからではなかったのだ。

前置きはこれくらいにして私がどうやって熱力学を学んだかを記してみたい。最初に読んだのは岩波書店からでている物理の考え方シリーズの「熱統計力学の考え方」だった。著者は砂川重信さん。たしかどうだろう大学5年目1993年の秋くらいじゃないかなあ。この本はなかなか良かった。熱力学の歴史のようなことが書いてあり、面白かった。ただ非常に薄い本であり、論理としてはおかしいと感じたものだ。本当の初学者向きである。

次に印象に残っているのは熱力学の本ではないがバークレー物理学シリーズの「統計物理」である。この本は驚くほど教育的配慮があった気がする。この本を読み始めた時のことはよく覚えている。1994年5月のことである。大学の近くの古本屋で購入したのである。当時肉体労働のアルバイトをしていた私は仕事が終わるとこの本を読んで至福のときをすごした。どうも最近復刻版がでているようなので統計力学初学者の方には強くお薦めする。

そして1994年9月16日にタイトルにある原島鮮先生の「熱額演習-熱力学」を私が以前在籍していた大学の教養生協で購入し、読み始めたのである。私はこの本で熱力学がわかったと思った。この本はタイトルは演習となっているが、普通の演習本ではない。まず講義のような説明があり、その後詳しい解答のついた例第があるという形式で、何というか、演習問題付き教科書というような感じだった。おそらくこの本で自己完結しているのだと思う。この本で熱力学がわかったと思う以外にその後アインシュタインの「熱力学とは第1種永久機関、第2種永久機関が存在しないためには世界はどうあらねばならないかを示したもの」(引用は正確ではない)という言葉でなるほどと思い、いっそう熱力学というものがわかった。

わたしはその他にも熱力学、統計力学の本は相当買ったがあらかた古本屋に京都にいた頃売却した。記憶にあるのがキッテル著「熱学」、この本はすぐ読むのをやめた。それから藤田他著「統計熱物理学」、この本は値段が高いわりによくなかった。ボルツマン方程式の導出に詳しかったと思うが何度読んでも理解できなかった。だいたいボルツマン方程式は統計力学とは関係ない。それから原島鮮著「熱力学・統計力学」これはいまでも持っている。前期の演習書に比べるとそれほど良くなかったと思う。長岡洋介著「統計物理学」この本も未だに持っている。なかなかいい本だった。戸田もりかず著「熱・統計力学」岩波の物理入門コースだがほとんど読まずに古本屋に売ったと思う。

2011年2月24日

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