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日本が植民地になることはなかった

2019年9月25日

よく、徳川幕府が滅んで、明治政府が実現しなければ日本は植民地になっていたとか、富国強兵政策をしなければ植民地になっていたとか言われるが、私に言わせれば全くの誤りである。まずその当時、イギリスやフランスなどの先進国は領土を増やすということに関心はなかった。つまりチンギス・ハーンのような欲はなかった。例えばだが、1800年頃、イギリスがインドをイギリスの領土にしたのはどうだろうか。イギリスは決してイギリス兵を派兵してインドを武力制圧したわけではない。東インド会社がインドの地方領主と同盟などを組みながら徐々に支配地を広げていったのである。そして東インド会社の兵隊自体はインド人であった。もともと東インド会社は商売をうまくやって儲けたいという欲によってできた組織である。その商売欲に徐々に支配欲が加わっていつの間にかインドの支配者になっていったのだろう。ガンジーは「イギリスがインドを奪ったのではない、インドがイギリスに与えたのだ」というようなことを言っていたようだが、まったくそのとおりだと思う。

まあ、その他いろいろ(日本が植民地になるはずはなかったという、そしてイギリスなどもその気もなかったという)根拠はあるが、当時はすでにチンギス・ハーンや豊臣秀吉の時代とは違ったってこと。日本の朝鮮併合もそうだ。日本としてはどちらかというと朝鮮には近代国家として独立して日本の友好国になってもらいたかった。近代国家としてというのは、まあ法律とか整備してとかいう意味。日本は朝鮮の軍隊を整備しようとしていた。しかしどうも、朝鮮王は野蛮な日本より、優しいロシアの保護下に入りたがっていた。朝鮮がロシア領になるということは、釜山あたりにロシアの軍港ができたりするわけで、日本としては怖いわけである。まあ、実際のところはロシアに日本を領有する気など全く無かったと思うが、日本はそれをすごく恐れた。それで日本は日露戦争のどさくさ紛れて朝鮮を併合したということだろう。日露戦争前の朝鮮についてはイザベラ・バードの朝鮮紀行に詳しい。だいたい力で併合しようという国が、その国の軍隊を強くするのを援助などしないよ。それは幕末の日本でもそうだ。幕府軍はフランスによって訓練されていた。薩摩はイギリスの会社から鉄砲を大量に購入した。イギリス、フランスなどの先進国は単に日本と商売をしたかっただけなのである。アーネスト・サトウだったと思うが、回想録には、「イギリス人を保護するために軍艦を日本に派遣するのは割に合わない」というようなことを書いている。つまりイギリスはイギリス人が安全に商売できるように軍艦を日本の港に駐留させていた。そりゃ、生麦事件のようにいきなり切りつけてくるわけだし、日本の警察もあてにならない。というよりまともな警察などない。だからわざわざ軍艦を派遣していたのだ。しかしその費用は商売での儲けよりも大きいと嘆いているわけである。

東南アジアがどのようにして植民地になっていったかは、よく知らない。しかしおそらく現地の多くの人がそれを望んだのだろう。立派な兵器や製品を作っているイギリスの統治のほうがその国の王の統治よりいいと思ったのだと思う。アフリカとかは、国と言えるほどのものはなかっただろうから、先進国が自分の領土だと宣言したらそれで領土になったのだと思う。まあ、アフリカとは商売もできないだろうから、これは領土拡張欲からきた植民地獲得だったのだと思う。

まあ、とにかくイギリスとかは別に日本を植民地化したいなど全く思っておらず、日本と商売をして儲けたい。商売するには治安を保って、近代国家っぽい法律をつくって商売しやすくしてくれ。それくらいのことだったというだけである。

もし、徳川幕府が続いた場合、日本はどんな国になっていただろうか。それはちょっとむずかしい問題だ。私は徳川幕府の実態についての知識があまりない。ただ、おそらくだが、明治維新が起きたときとあまり変わらなかったと思う。まあ、明治維新というのをどこまで含めるのかによるのだが。明治維新を単に徳川大名を薩摩、長州を中心とする大名が倒して、権力を握ったという考えもあるだろうし、その後の欧化政策を含めて考える場合もあろう。まあ、徳川政権が続いても、開国していたので科学技術はどんどん入ってきただろう。また、政府の機構も外国を真似していったであろう。私個人としては、明治維新のような陰謀的な血なまぐさいことが起きるより、徳川幕府が続いていた方が日本にとってよかったのではと思う。そうすれば明治以降の帝国主義的なこともなかったかもしれない。一般に武力でできた政権というのは他国への膨張政策になりがちなものである。それでだが、その仮に続いていたとした徳川政権が、やたらと国主導で富国政策や徴兵制度をしなかった場合はどうか。この場合も、何度も書いているにように欧米諸国は別に日本を領土にしても何の利益もないので植民地になることはあるまい。だいたい富国政策というのは、別に明治政府もしてないんじゃないかな。今の日本のほうがずっと富国政策だよ。明治時代はとにかく政府の規模が小さかった。鉄道だって、例えば東北本線は私鉄だった。明治政府のしたことなんてせいぜい、いくつか工場を建てたくらいなものだろう。それに比べて今の日本の公共事業やら科学技術予算を見よ。ずっと富国政策だ。

もし日本が他国の植民地になるというのなら、それは内乱が起き外国の力を借りたときであろう。例えばインドのように。インドでは地方の王は東インド会社の力を借りて自分の勢力を強めようとした(ようだ)。そして、かつ多くの日本人が植民地になることを望み、かつ国の体制がいわゆる非近代的でイギリス人たちが商売をするには不適な状態のときだけだろう。で、もし一度植民地になったら独立というのはなかなか難しいことだと思う。というのは、まず、一般の民衆にとって、支配者が自国の人であろうと他国の人であろうとその人の幸福度には関係ないからである。それと独立となると、多くの役所の人間がクビになる。となるとそこに勤めていた自国の役人は嫌がるであろう。その役人にとっては植民地であるほうが職の安定にとってはいいのである。

尚、まあ、ここに書いたことは、事実誤認もあるかもしれない。せっせと資料を読んだわけでもないし。私が知っていることで、私が思っていることを書いただけである。

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