電磁気学という学問のわかりづらさ

電磁気学的量子力学的力

大ざっぱに言えば、力学は力が与えられたとして、物体はどう動くかを考える学問と言えるでしょう。それに対して電磁気学は電荷にかかる力はどれだけかというのを考える学問と言えます。電荷にかかる力は

とかけますから、この中のEとBを求める学問ということです。じゃー電荷にかかる力はこれだけかと言ったらそうではなく、例えば重力があります。これはわかりやすいですね。そして重要なのが電磁気を源に持ちつつも上記のEやBに入らない力があるということです。これは電磁気的な量子力学的力とでも呼びましょうか。例えば、電流に対する抵抗はこの電磁気的量子力学的力でしょう。電子が原子や分子に衝突して速度が遅くなると言ってもそれは陽子や電子に衝突してつまり電磁気的力を受けて遅くなるわけです. しかし、これは上記のEやBには入ってきません。それから電池による起電力も電磁気的量子力学的力です。だから電荷の運動方程式は

となるわけです。F_dq はその電磁気学的量力学的力です。これが現象を説明するために都合よく出てきます。そこがわかりずらいところです。この力はマクスウェル方程式とは全く別の力です。

記号の複雑さ

現在の教科書はほとんどがSI単位系つまり有理MKSA単位系を使っていますが、これがまた実に繁雑です。これも電磁気学のわかりずらさの原因の一つになっていると思います。クーロンの法則の比例定数とアンペールの法則又はビオサバールの法則の比例定数は電荷の単位を決めれば当然ある割合になるわけです。実際はビオサバールの法則の比例定数のc^2倍がクーロンの法則の比例定数です。だから比例定数の文字として一つだけ使えばよいわけですがSI単位計ではの2つ使っています。他の単位系では一方の比例定数が1になるように電荷又は電流量を決めているのでこの文字は出てきません。さらに比例定数として4πがでてくる。これは単にマクスウェル方程式で4πがでないようにするためなのですが、私は好きになれません。クーロンの法則のような単純な法則に4πが入るのは不自然です。発散や回転に4πが入る方が自然だと思うのですが・・・・・。

それからと言う量(この定義は真空中のみ)が出てきます。Bに定数を掛けた量などなんの役にも立たないと思うのですが。そして真空中の透磁率などというわけのわからない量がも出てくるわけです。私は記号はできるだけ少ないほうがいいと思いますよ。確かに新しい記号を使えばそれだけ書く量が少なくなる。しかしその分だけ、この記号はどういう意味だったかな~とわかりづらくなる。ところが という簡単な関係だから、わざわざμなど導入しても式が短くなったりしないのです。 個人的に使ったりその分野の専門家が使うのはいいとは思いますが。Dと言う量にも同じことが言えます。

連続体近似

マクスウェル方程式に現れる電荷密度や電流密度は場と時間の連続関数として登場します。しかし実際は電荷をもつのは電子や陽子であり、電荷密度や電流密度は不連続な値になるはずです。だから電荷密度が連続だというのは粗っぽい近似なわけです。それなのに教科書ではそれが厳密に成り立つかのように議論を進めていく。そんなのいいのかとよく思いますが、そんなところも電磁気学がわかりづらい理由になっていると思います。

計算の複雑さ

電荷が与えられたとき電場、磁場は次式の積分つまり足し算をすれば求まります。

非常に複雑な式なわけです。これが実際にマクスウェル方程式を満たしているのを確かめようと思ったら、相当な根気が必要です。電場の発散の値も電荷がない場所で0となるのはせっせと計算して、部分積分をすればなんとかできます。しかし電荷がある場所の発散となると極限の操作が面倒です。まあ、マクスウェル方程式を満たしているのだろうと信じて先に進みましょう。そして実際に足し算して電場磁場を求めるのもうんざりしてくるくらい大変です(ここでr'=rとなるような点は避けて積分しなければなりません)。自然ってこんなに複雑なのかと思ってしまいます。それでこの式で実に不思議だなあと思うのは電荷に印をつけといて、その電荷が動いているとその電荷は2回積分に現れてしまうことです。もちろん光速に比べて遅ければ、ほとんど効果はないに等しいのですが、理屈としてはおかしい。

電子というのは加速させると電磁場を放出するそうです。実験的に確かめられていて、何でも制動放射というそうです。このとき電子の大きさというのがどうも問題になるらしいのです。電子に自己力が働かないとしたら電子の速度減が説明できない。電子に自己力があるとすると、これ又うまく実験を説明できないらしいです。ここらは詳しくないのでまあこのへんでやめておきますが。マクスウェル方程式も何かと問題があるとは思いますよ。マクスウェル方程式からじゃあ、すべての物体が出す熱放射なんて出てこないでしょう。熱放射は巨視的には電荷も電流密度もない物体からでるのだから。