物理の本
ここに載せてある本は、ほとんどが1995年以前に出版されたものです。リンクは単にアマゾンへリンクされているだけです。
物理全般 シリーズ物
初学者にとっては砂川重信さんが書かれた物理の考え方 全5巻 (1) (2) (3) (4) (5)はなかなかいい本だと思います。私も力学以外はだいたい読みました。内容的には概略的ですが、読みやすく、読んでいて楽しい本です。もちろんこの本だけでは全く足りません。このシリーズより分厚いですが説明も丁寧でしっかりしている本としてバークレー物理学コース(全5巻)がお薦めです。特に電磁気 (CGS単位系)と統計物理 はよい本だと思います。「統計物理」は統計力学が初めてという人にはお薦めです。私も最初この本で統計力学を勉強しました。著者がはしがきで「書くのは大変だった」と言うだけあって、力作だと思います。ただバークレー物理学コースは値段がべらぼうに高くなってしまいましたね。私も昔は全巻持っていたのですが、通してほぼ読んだのは「統計物理」と「電磁気学」だけです。あとの「力学」、「波動」、「量子物理」はぱらぱらとめくって興味あるところだけ少し読んだ程度だったと思います。そして古本屋に行きました。岩波の(物理入門コース) はあまりいい本はなかったですね。このシリーズの解析力学はひどい本だと思いました。物理の本にも好みは確かにあるのですが、やはりいい本と悪い本というのはあるのです。それはやはり著者や編集者の情熱の加え方であったり、著者の能力であったり。ファインマン物理学シリーズは講義を活字にしてできたものらしいです。そのためか教科書には向いてないと思います。ただ、たまに眺めていると面白い視点や鋭い視点が見れます。今はインターネット上で無料で読めます。英語ですが、物理の英語は易しいので、英語が苦手な人でも読めると思います。
倍風館からでている物理学辞典 は、非常に役に立ちます。値段は1万円以上すると思いますが、(私が持ってるのは縮刷版で1万円ちょっとだったと思う)一生使えますので真面目に物理をやるなら購入することをお薦めします。あれば何かと役に立つと思います。私の持っている物理の本の中で最もよくページを開き、最も役に立っているんじゃないかな。
演習書としては共立出版から出ている詳解演習のシリーズはよかった記憶があります。字が細かくてレイアウトは少し見ずらいのですが、初歩的な内容から高度な内容までカバーしてた気がしますね。そういう意味で岩波の(物理入門コース)はレイアウトは高校を出たばかりの学生さんには見やすくていいのですが、中身が・・・・ですから対照的です。これは値段も安くていいですよ。私は力学 、電磁気学 、量子力学、詳解物理応用数学演習 を持っていた気がします。御多分にもれず古本屋に売ってしまいましたけど。
力学
裳華房から出ている原島鮮さんの質点の力学 ・質点系・剛体の力学 がいいでしょう。先日久しぶりにページをめくってみましたが、概念の導入など丁寧で、これを読んで至福の時を過ごしたことを思い出しました。それから原島鮮さんの力学 はこれよりやや高度ですがいい本です。本格的な解析力学が学べますが、後半の正準変換あたりは理解不能ですね。そもそも、解析力学のわかりやすい本というのはないですね。ただ解析力学が物理というものを学ぶのに必要かといったら大いに疑問ですけど。解析力学によって、力学の見通しがよくなるということもないと思います。ファインマンの経路積分をしれば量子力学の見通しがよくなると思いますが、解析力学を知ったからといって、見通しがよくなることはないと思います。まあ、数学ですからね。岩波の物理入門シリーズの力学 それと解析力学 はよくなかったですね。ゴールドシュタインの"古典力学 上・下(第3版)は解析力学がメインの本なのですが、だいたい何でもでてて、手元においとくと便利かもしれません。私が持っているのは第2版です。
力学の概念的基礎や歴史を知りたい場合はやはりマッハのマッハ力学史〈上〉〈下〉がいいでしょう。というよりこの本しか力学の歴史や概念について書いた本はないと思います。いい本だと思います。
電磁気学
バークレー物理学シリーズの電磁気 (CGS単位系)がいい本です。それから砂川重信さんの書かれた理論電磁気学 もお薦めです。この本は一度電磁気学を勉強された人が2度目に学ぶのに適した本で、内容的には高度ですが、論理が一貫しています。ただちょっと数学的すぎるというか式変形中心すぎて物理がみえてこないとは思います。バークレーの電磁気学は説明が物理的ですよ。2度めに学ぶ本として電磁気学 (岩波基礎物理シリーズ (3))は内容的に高度なことをコンパクトにまとめていていてよかった気がします。電磁場の放射の説明もありますし。 それと岩波の物理入門シリーズの電磁気学 I 電場と磁場 (物理入門コース 3) もまあまあだったと思います。こちらは完全に初学者向き。もう古本屋に売ってしまっていて手元にはありませんが。
電磁気学というのは、与えられた電荷に対して電磁場はどうなるか、というのが主題です。そこが力学と異なることで、力学というのは力が与えられたときに物体はいかなる運動をするかというのが主題なわけです。そして電磁場を決める式がマクスウェル方程式なわけです。電磁気学の教科書に書かれていることというのは、1つはマクスウェル方程式が成り立つことの根拠。たとえばクーロンの法則とか、実験とか、アンペールの法則とかいろいろ書いているわけです。でいかにもマクスウェル方程式が実験結果からの論理的必然のように書いているわけですが、そんなことは全くなくて、実験結果を説明する1つの断定であって、飛躍があるわけです。私なども電場の発散が電荷密度に比例すると言う式が、電荷密度が時間的に変化するときも成り立つというのが不思議でしょうがありません。それを確かめた実験というのもないでしょう。 もう1つの主題はマクスウェル方程式を解いて、マクスウェル方程式からどんな法則がいえるかということ。たとえば電磁波の放射の式を導くとか。それからクーロンの法則やアンペールの法則とか、マクスウェル方程式の根拠になった実験結果を演繹することなど。だいたいその2つが電磁気学の主題でしょう。それから電磁場の源である電荷の運動は広い意味でのローレンツ力の式で動くわけです。電場と磁場によってきまる。でも電荷の運動は電磁場のみによって決まるわけではない。手で動かしても動きます。手で押すと言う行為は古典電磁気学で言う電磁場には含まれないでしょう。電池による起電力もローレンツ力の式からは出てこないでしょう。ここらが電磁気学のわかりづらいところだとは思います。
熱力学
熱力学の原理は第1法則と第2法則です。第1法則はエネルギー保存の法則です。つまり熱と仕事の総量は変わらないということです。冷蔵庫に電気エネルギーを送ればそれは全て熱エネルギーに変わる。冷蔵庫が失った熱と電気エネルギーを合わせた分だけ外部(台所)が熱をもらい暖まるという意味です。これはわかりやすいと思いますが、問題は第2法則です。これは第2種永久機関は不可能ということなのですが、一定温度の熱源からの熱を全て仕事に変えてかつその機械自身は元に戻るという機械は製作不可能という物理学の法則としては極めて変わった法則です。通常の物理法則は量と量の関係例えば万有引力は距離の逆2乗に比例するとか、加速度は力に比例するとかなのですが・・・・。ユーグリッドの公理に少し似てますね(平行線は1本しか引けないなど)。それで熱力学のいろんな結論と言うのはこの第2種永久機関が作れないようになるためには圧力や体積などはどういう関係にあらねばならないかということを非常にわかりずらく(実験事実と組み合わせて、偏微分やらエントロピーやら自由エネルギーやらを使って)説明しているわけです。例えばクライペロンの式とかを導くわけです。
裳華房から出ている原島鮮さんの熱学演習―熱力学 がお薦めです。演習書という形式になっていますが、教科書として使えます。砂川重信さんの物理の考え方シリーズの熱統計力学の熱力学の部分は熱力学の歴史的記述があって理解を助けてくれるでしょう。ただ論理的にはおかしな本だったと思います。最近は熱力学の本もいっぱい出ているようです。田崎晴明さんの熱力学―現代的な視点からは評判がよいようです。本の内容なんですが、私は最初の部分しか読んでないんですが、少なくとも初心者向けではないと思いましたね。もう10年以上前のことなんで忘れましたが、公理主義的に書かれていたと思います。私の考えでは、どういう事実を根拠にそいういう公理が成り立つのかということが詳しく書かれている本のほうが物理を理解する上ではいいと思っています。熱素説はなぜだめになったとか、ジュールの実験の意義とか。ただ、力作であることは間違いないと思います。
統計力学
最初にも述べたバークレー物理学コースの統計物理 が初学者にお薦めです。それから、岩波基礎物理学シリーズの長岡洋介さんの統計力学 (岩波基礎物理シリーズ 7) も結構いい本でした。演習書としては、私は熱学演習―統計力学 (基礎物理学選書) をやりました。この本に関しては特に印象に残っていないのですが、ひと通りやった跡があるので、それなりの本だったのでしょう。
量子力学
量子力学に関してはお薦めの教科書的なものはありません。どれもわかりづらいです。それは著者自身がよく理解していないからだと思います。とは言っても、ファインマンのファインマン物理学 量子力学 は素晴らしい本だと思います。初学者が読んでも、一度学んだ方が読んでもその価値があると思います。ファインマンは量子力学というものを何とかより理解しようとしたというのが伝わってきます。他の本はどれも似たり寄ったりで、計算法を書いているだけ。ファインマンの量子力学は物理が書いてあるというのが感想です。式に現象が対応している。ただ講義を本にした本であり、教科書としては向かないかなとは思います。
私は最初、裳華房の原島鮮さんの初等量子力学 、裳華房の小出昭一郎さんの量子力学〈1〉 〈2〉 を読みました。小出さんの方は、計算は丁寧に書いてあるが、結局何が言いたいのかよくわからない本だった気がします。量子力学の勉強は苦痛でしたね。最初に深遠なことが述べられていて、わくわくしていたら、あとは何かうやむやのうちに特殊関数を使った計算、計算という感じを覚えています。量子力学というのは何か計算法の体系という印象でした。その計算法をただ理解し覚える。楽しいはずが無いですよね。量子力学あたりから物理はもう、実験データに合う計算法を編み出す。そしてパラメーターを変えたときに別の現象を予言できて、それが実際起こればいいという感じがしますね。継ぎはぎだらけの計算体系というのが私の量子力学に対する印象です。 より深い理解を追求しないなら、量子力学が難しいということはないと思います。単に時間発展はシュレディンガー方程式で決まる。そして測定してある値が出る確率は、その演算子の固有関数で波動関数を表現して、その係数の自乗である。ただそれだけですからね。主張している物理法則としては単純な話ですよ。ただその意味するところとなると何か釈然としないわけです。量子力学を学んでいるといろいろと釈然としないことは多いのですが、演習問題をやって、世間の物理学者はだいたいこういう意味で使いこう解釈して、こう応用しているのだたつかめばいいのではないでしょうか。演習問題としては、裳華房の小出さんの量子力学演習 (基礎物理学選書 17) を私はやりました。あと古本屋に売ってしまって覚えていないのですが、確か講談社の猪木さんという人が書いた量子力学1、量子力学(2) は演習問題が豊富で答えの解説も詳しかったと思います。結構いい本だったと思うのですが、なにせ誤植だらけで嫌になったことは覚えています。あとJJ桜井の現代の量子力学(上) (下) (吉岡書店)は2回目以降に学ぶのには非常にいい、わかりやすい本ではないでしょうか。この本は確か上下に分かれていて1冊5000円ぐらいしたので図書館で借りて、部分的に読んで、今手元にはありません。教科書ではないですがドゥ・ブロイの物質と光 は割と読みやすかったです。
量子力学については私も何とか明確に理解しようと思い悪戦苦闘しましたよ。ハイゼンベルグのThe Physical Principles of the Quantum Theory (Dover Books on Physics) の日本語版を読んだり、朝永振一郎の量子力学 I を読んだりいろいろ努力しましたよ。この朝永さんの量子力学は名著だと言われているのですが、わかりづらいです。量子力学の歴史的叙述なのですが、数学的な話も多いですし、物理の理屈も明快ではない。ただ前記量子論自体が混迷を極めていたらしいので、いたしかたないのかなとは思います。で、まあそういう努力のあとでも結局は不明快なままでした。今もそうです。(今勉強しなおしてます。2016.7月)なにか雲を掴むような話と言うのは正に量子力学に言えるのではないでしょうか。私の結論は要は著者もわかっていないということでした。量子力学を勉強してた時に質問を並べたら百を簡単に越えたと思います。結局は統一した筋の通った理屈があるのではなく、部分的にわかっているというのが実際じゃあないでしょうか。原子のスペクトルの計算法とか。散乱断面積の計算法とか。そして結局はエネルギー固有値を求めることがほぼすべて。量子力学をわかるようになるには自分で実験するしかないなとも思うようになりました。いろいろと測定のことが書いてあってもどうも実感がわかない。書いている著者も実験などしたことがない。物理の世界ってのは今は理論系と実験系に分かれてしまっているんです。理論系の人は実験を全くしない。理論系っていったって何か深遠なことを考えているわけでもなんでもなく、ただ計算しているだけなんですがね。それで教科書も私の知る限り理論系の人しか書かない。それもあってか、なにかこう実感のわかないような実験の記述になってしまう。それから有名なディラックの量子力学 ですが、ぱらぱら読んだ感じですが、このわかりずらさは天下一品だと思いますよ。序盤は線形代数の話しなのですが、あんな書き方じゃあ誰もわからないでしょ。古典論とのつながりも正に雲を掴むような言い方。その上、図は1つもなし。式変形も一言注釈をつけてくれればすぐわかるのに、そういうこともなくサラッと書いていることが多いので、式を追いづらい。簡潔さというかエレガントさを追求して意図がわかりづらいという感じがしますね。それじゃ教科書としてはだめでしょ。それにディラックだって実験なんて1回もやったことないでしょ。記号も今とは違うので、そこらも読みづらさを増幅してますね。でも持っていて損はない本だとは思います。
相補性原理というのは私にとっては全く雲をつかむような話で意味がわからないです。まるでカントの「純粋理性批判」のようにわけがわからんです。測定が必ず撹乱を起こすから確率でしか言えないという意味なんですかね~。 ハイゼンベルグが書いた量子論の物理的基礎はボーアの考えを説明した本らしいですが、私も少し読みました。 不確定性原理なども説明しているのですが、私の考えでは波長に運動量を、振幅に位置を対応させたという時点で自動的に不確定になると思うんですよね。相補性原理というのは、反論のしようが無いほどわからないです。 岩波文庫からボーアの ニールス・ボーア論文集〈1〉因果性と相補性が出ています。少し眺めましたがよくわからなかったですね。それから、こんな本も ニールス・ボーア論文集〈2〉量子力学の誕生 あります。
特殊相対性理論
砂川重信さんの物理の考え方シリーズの相対性理論 は初学者にお薦めできます。 時空の物理学―相対性理論への招待 は非常にいい本なのですが、残念ながら絶版です。図書館にはあると思います。数学をあまり使っておらず、どちらかと言うと一般向きですが、内容はしっかりしています。内容は特殊相対性理論についてです。原書はSpacetime Physics: Introduction to Special Relativityと売っているようですが、7600円ですか、値段がべらぼうに高いですね。私なら絶対買いません。
特殊相対論の主張は、ある2つの事件の時間間隔がA氏とA氏に対して動いているB氏とではいかなる関係にあるかと言うことです。常識的には同じと考えられますがが、特殊相対論によると、わずかだけ異なります。なぜかと言うと特殊相対論では 時間と言うものを光の移動距離で定義しているからです。 光の移動距離なら確かにA氏とそれに対して動いているB氏とでは異なっても不思議ではないでしょう。時速100キロの車は1時間で100キロ動きますが、時速60キロの車からみると40キロしか移動しないからです。では、そんな光の移動距離などで時間を定義してしまっていいのか?時間は地球の自転、公転の恒星系にたいする移動距離で定義しなきゃいけないのでは?それにそんな時間では我々の時間感覚と一致しないのでは?などと疑問も起こると思います。私は問題ないと思います。そのように時間を定義しないとA氏とB氏では物理法則(Xと言う原因にはYと言う結果が伴うということ)が異なってしまうからです。私の書いた論文ページにあるPDFファイルが参考になるかもしれません。
一般相対性理論
一般相対性理論に関して分かる本というのは無いです。少なくとも私が納得できる本はなかったです。知りたいことが書いてある本がないというのかな~。だから自分で一生懸命考えました。でもわからないことが多々あります。そういうところは教科書を書いている人はもちろん、アインシュタインもわかってなかったと思います。でもそれはある意味当然でそんな矛盾もない物理理論なんてなかなか作れないでしょう。
よく、一般相対性論の理解には高度な数学が必要と言われますが、私はそうは思いません。テンソル解析は添え字が繁雑なだけで考え方じたいは全く難しくないと思います。線形代数を勉強された方なら、すぐ慣れるでしょう。私は田代さんのテンソル解析 と洋書のテンソル解析の本 Tensors, Differential Forms, and Variational Principles を読みました。田代さんのテンソル解析 の本プラス、矢野さんのリーマン幾何学入門 の第3章まで読めば必要な数学は身に着くんじゃあないでしょうか。 一般相対性理論で難しいのはその数学でなく、物理自体の内容、意味だと思います。あの形式的な式変形から物理現象をイメージするのは極めて困難です。私も理解できない部分(私の能力不足)や、納得できない部分(理屈自体がおかしい)が多々あります。
一般相対性理論は非常に形式的です。よく相対論は物理学の幾何学化ともいわれますが、物理学の代数化と言う方が正確なのではないでしょうか。文字記号(代数)による式変形中心の理論であり、物理的内容はなかなか掴めません。解析力学とマクスウェル方程式をさらに形式的にした感じです。本来は慣性系を他の物体の位置から決めるというのが趣旨(?)だったような気がしますが・・・・・。
あまりわかりやすい本はないのですが、私はアインシュタインの原論文アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論― のA3を読みました。それと内山さんの相対性理論 (物理テキストシリーズ 8) を半分くらい読みました。これらを読んでなるほどわかったという気にはとてもなれませんでした。それにこんな書き方じゃ~絶対わからんだろうという箇所がいくつもあったと思います。それからメラーの相対性理論 も部分的に。この本は一番、物理的内容を重視しているんじゃないですかね。それから、1度相対論を学んだことのある人にとっては、パウリの相対性理論〈上〉 〈下〉 (ちくま学芸文庫) は非常に素晴らしい本だと思います。この本は元は百科事典用の論文であり、1921年以前までの相対性理論の研究の概要を書いてあります。私なども相対性理論などはアインシュタイン一人で作ったものだと思っていたのですが、これを読むと当時いかに多くの人が相対性理論を研究していたかがわかります。しかし、これだけの本を書くには相当な量の論文を読まなければいけないわけで、弱冠21歳のパウリがこの本を書いたというのは驚き以外の何物でもありませんね。
本の読み方、学び方など
勉強に慣れていない最初のうちは。なるべく演習問題をやった方がいいと思います。わかるようになるためには自分で考えることが大切だと思うのですが、最初のうちはどうしても読む方に偏りがちになる。つまり自分であまり咀嚼しないで右から左へ流れていく。そこで演習問題をして自分に課題を与えて自分で考えるようにするということですかね。大学生用の演習問題集は、高校生用の問題と違って、理解を深めることに重点をおいたいい本が多いです。
それから、本はその分野に関して1冊でなく何冊か読んだ方がいいでしょう。本によって説明や論理構成も異なりますので、理解が深まります。大学で学ぶ物理が一度ですんなりと理解できるということは、まあ、あり得ないと思います。2度目か3度目ぐらいにスッとわかったりするものです。物理がわかるということは、他のことが、例えば仕事とかがわかるということと同じことだと思います。仕事でも最初はわけが分からなくても1年、2年とやっていくと互いの関連がつながりわかってくる。物理でも同じことじゃないでしょうか。知らない街の道を覚えるのとも似ているかもしれませんね。引っ越した当時はわけわからなくても、迷いながらウロウロしているとつながりがわかってくる。
そしてわからなくなってきたら、間をおいてまた挑戦する。同じことばっかりしていれば飽きるし疲れる。少し間をおけば、脳がリフレッシュして今度はずっと深い理解が得られる。
尚ここにお薦めとして推薦した本はほとんどが1995年以前に出版された本であり、最近の良い本は含まれていません。又、私自身が深い理解を目指していたので、その目的にあった本を推薦していると思います。
何か、ここで偉そうに推薦したり、けなしたりしていると、私がその本を端から端まで読んだかのように思うかもしれませんが、そんなことは全くありません。端から端まで読んだ本というのはほとんどないです。読んだ部分についても理解しているわけでは決してありません。
本の読み方も人によっていろいろだと思います。小平邦彦という有名な数学者が、「本を写すとわかるようになる」と自伝で書いていました。私も最初のころ本を読んでもなかなか理解できなかったとき、この方法を試してみました。しかし私にはさっぱり向きませんでした。ただただ退屈なだけでした。
一般的に言うと、数式ばっかり書き連ねている本はよくない本が多いです。そうでなくて日本語というか言葉で多くを説明している本にいい本が多いです。それは自分で解説を書いてみればわかるのですが、数式ばっかり書き連ねるのは楽なんです。しかし、物理を言葉で説明すると言うのはしんどいし、よくわかっていないとできない。なんかの本で読んだのですが、高校生の数学の証明の答案なんて数式しか書いてない、と。そんなことからも想像できるでしょう。
傾向としては、翻訳された本は割にいい本が多いです。それはいい本だからわざわざ翻訳するからだと思います。
その他の本
教科書ではないのですが共立出版のアインシュタイン選集 全3巻はあると一生使えるのではないでしょうか。値段は1冊1万円近くしますが。私は古本屋で買いました。アインシュタインが書いた一般相対性理論の解説(第2巻)はわかりやすいです。若いころその出だし部分を読んで強い感銘を受けました。慣性系とは捏造された原因であり、原因とは観測したものでなければならないという話です。これが一般相対論の基本的考えじゃないでしょうか。第3巻はアインシュタインが物理以外でも深い考えを持っていたのがよくわかります。
それからパイスが書いた神は老獪にして…-アインシュタインの人と学問 はアインシュタインの考え、学問発展の解説になっていて非常に勉強になります。教科書だけではわからない何か基礎になっている思想と言うものがわかります。私にとってはこの思想が一番好きなところです。
ファインマンの書いた一般向けの物理の本で光と物質のふしぎな理論 はわかりやすくて面白かったです。図書館で借りて読んだのですが。量子電磁気学を巧みに解説してたという記憶があります。
だれが原子をみたか (岩波現代文庫) は名著であり読んで面白い本だと思いました。さすが大家の江沢さんが書いた本です。私は岩波科学の本という子供向けハードカバー版を図書館から借りて読みました(2013.9)。 7章の23の「気体の重さと高度分布」でマクスウェル分布から気体の高度分布などを導いているのですが、証明の仕方が明らかに間違っていると思います。というか、むりやり理由をでっち上げているというか・・・・。
日本人の桑木彧雄という人が書いたアインシュタインの伝記(PDF)がネット上で見られるのですが、なかなか面白いです。この桑木彧雄という人は、アインシュタインが無名で特許局に勤めていたころに、アインシュタインを訪問したという人です。アインシュタインの伝記は数多いのですが、こういう人が書いた伝記はないでしょう。これは科学図書館というサイト内で、運営者がPDF化して公開してくれているものです。この科学図書館というサイトは他にも著作権の切れたものをたくさんPDF化してくれていてありがたいことです。
それから同じくネット上のものですが、先日 FNの高校物理というサイトで光の実験に関する記事を読んだのですが、勉強になりました。特にブラッドリーの光行差の発見に関するものとフィゾーの光の速度の測定実験を詳しく読みましたが、わかりやすく、背景も詳しく、レベルの高い内容でした。 市販の物理の本であれほど詳しく書いてある本というのはないと思います。タイトルは高校物理とありますが、題材が高校物理だというだけのようで、大学・研究者レベルの内容です。