日時計の作り方とその原理

日時計の作り方

図1 北極での目盛

図1のように15度づつの線を引き時計回りに時間をふる。午前5時から19時ころまでふれば十分だと思う。これが北極での日時計である。

図2

これを日本の緯度35度の日時計に直す。 例として午後3時の線を直してみる。
①午後3時上の好きな点A(あまり遠くない方がよい)から6時の線に垂線をおろす。その点をCとする。②点Cから35度の線を引き、直角三角形ACB'を作る。③点Cを中心にして半径CB'の円を描き直線ACとの交点を点Bとする。OとBを結んだ線が日本の15時の線である。
tan∠BOC・sin35°=tan∠AOCの関係があるので∠BOCを関数電卓で求めてもよい。

図3

完成図は図3のようになる。13時から17時まで引き、午前と午後は正午線に関して対称。

図4

最後に図4のような35度(日本の緯度)の直角三角形を図5のように12時の線上において、12時を真北にし水平におけば完成である。より正確な時刻についてはこのページの最下部を参照して欲しい。

図5 水平に置く

日時計の原理

図6 太陽は春分の日と秋分の日に赤道面上に来る。冬至の日と夏至の日に赤道面上との角度が最大になる。

地球は図6のように北極と南極を結ぶ線を軸に自転している。北極の上から見ると反時計まわりである。

図7 

庭に置いていた日時計を、12時を真北に向けたまま水平に屋根の上に移動(平行移動という(注1))させても影の示す位置は変わらないはずである。というのは日時計を移動した距離に比べて太陽は遠いので光の向きが変わらないからである。同様に日本においてある日時計を図8のように北極へ平行移動しても影の位置は同時刻では同じである。日本と北極の距離は太陽と地球との距離に比べて短いからである(注2)。

図8 

図9 

日本から北極に平行移動した日時計と北極の日時計との関係を調べる。しっかり理解するために、できたら印刷して読んでもらいたい。北極の日時計の目盛は図1なのだが、置く向きをどうするかというと、北極の日時計の6時の線を日本から持ってきた日時計の6時の線と重ねておく(図9)。日本の日時計の斜線OPは北極では垂直になる(図9)。そのOPの影は自転速度は一定なので北極平面では1時間に15度づつ進む。
OAをある時刻におけるOPの北極平面上の影としよう。そのとき日本平面でのOPの影はどうなるか。それは、点Aから垂線を延ばし日本平面との交点をBとし、BとOを結んだ線がすなわち日本平面でのOPの影となる。なぜなら、OPの影がOAということは、太陽はOPAを通る平面上にあるということである。となると、OPA平面と日本平面との交線が日本平面での影となるはずである。ところでABはOPに平行なのだから、ABはOPA平面上にある。よってOBはOPA平面上にある。というわけである。

図10 OA=1としている。

さて、その影OBとOAの関係を同一平面上で見よう。北極平面と日本平面の角度は55度(90-35=55)なのだが、日本平面をパターンと倒して北極平面に重ねてみよう。図10で、点Aから6時ー18時線への垂線の足を点Cとする。図10のように三角形ACB'が図9の三角形ACBと合同になるように点B’を作る(ACBを横に倒す)と、CB’=CBである。だからCB'を半径とした円を描けばBの位置が求まる。また図10でのθとθ’の関係は、
              tanθ’・sin35°=tanθ
となる。この式と関数電卓を使って日時計を作ってもよい。

冬には北極では太陽が見えないが考え方は同じである。図9でOP'というのを作って、南極に平行移動すればいいだけである。尚、影の先端の軌跡は双曲線になる。

より正確な時刻

より正確な時刻を知るためには日時計の指す時刻を補正しなければならない。と言うのは太陽が真南に来たからと言って必ずしも、(というよりいつもだが)12時になるわけではない。原因の1つは経度の差である。東京と九州では東京の方が真南に来る時間が早い。これは簡単に補正できる。複雑なのは地球の自転軸の公転面に対する傾きによるものと地球の公転速度が一定でないことによるものである。これについては日の出日の入時刻の計算の考え方(PDF)で解説したので参照して欲しい。例えば名古屋で太陽が真南に来る時刻は図11

図11 南中時刻とは太陽が真南に来る時刻のこと 

のようになる。例えば2月1日頃は真南に来る時刻は12時5分ごろである。だから日時計が12時を指していても本当の時刻は12時5分である。日時計が15時を指していても15時5分と言うわけである。地域による南中時刻のグラフはエクセルファイルで計算できるので参照して欲しい。

より正確な時刻

日時計のことを書いた本と言うのは私の知る限りでは はじめての天文学 (1973年) (amazonへリンク)だけです。子供向けで非常にいい本なのですが、残念ながら絶版のようです。日時計についての記述はありませんが、 新地学 (チャート式シリーズ)も素晴らしい本だと思います。高校生向けの参考書ですが太陽惑星の運行、天文について理解が得られるでしょう。これも絶版です。 より本格的には 天文学通論がいいと思います。これも絶版です。それから それでも地球は回っている―近代以前の天文学史は非常におもしろく、古代にいかに天文学が発達していたかわかるでしょう。

日時計の作り方とその原理

(注1)平行移動とは正確に言えば、全ての点が同じ距離移動するという意味である。簡単に言えば回転させずに移動させるということである。あらゆる面が動かす前と後で平行だといってもよい。

(注2)地球と太陽の距離は約1億5千万km地球の半径は約6400kmでおよそ2万3千倍である。日本からの太陽の方向と北極からの太陽の方向の角度差は多く見積もっても0.003度である。時間でいえば1秒であり、日時計の精度では関係ない。