付録C 他の変数での母関数
本文では\(q,p\)が\(q,Q\)で表せる場合としたが、定理5-6の
\begin{equation}
\mathcal{L}'=\mathcal{L}+\frac{dF}{dt}
\label{er1}
\end{equation}
が簡略化できるのは、あと3つの表し方がある。ここで\(\mathcal{L}\)は\(\sum_i p_i\dot{q}_i-H\)のこと。全て書くと
(I)\(q,Q\)、(II)\(q.P\)、(III)\(p,Q\)、(IV)\(p,P\)
である。
変換\(q,p\to Q,P\)で、\(q,p\)側から1つ、\(Q,P\)側から1つとった組み合わせである。(I)の場合は本文で説明したので(II)、(III)、(IV)の場合について説明しよう。
(II) \(q,p\)が\(q,P\)で表せるとき。
これは\(\det\left| \frac{\partial\, P_j(q,p,t)}{\partial\, p_i}\right|\ne 0\)のとき可能である(定理1-5陰関数定理の系参照)。
母関数\(F\)を
\[
F=F_2(q,P,t)+\sum_i P_iQ_i
\]
とおこう
(注 \(F\)と\(F_2\)はルジャンドル変換の関係になっている。これは第4-1節で述べたルジャンドル変換の符号が反対のルジャンドル変換である。)。
すると
\[
\frac{dF}{dt}=\frac{\partial\, F_2}{\partial\, q_i}\dot{q_i}+\sum_i \frac{\partial\, F_2}{\partial\, P_i}\dot{P}_i+\sum_i \frac{\partial\, F_2}{\partial\, t}+\sum_i\dot{P}_iQ_i+\sum_iP_i\dot{Q}_i
\]
となり、これを式(\ref{er1})に入れて\(q,P,\dot{q},\dot{P},t\)の恒等式になるには、
\begin{equation}
\frac{\partial\, F_1}{\partial\, q_i}=-p_i\qquad \frac{\partial\, F_1}{\partial\, P_i}=-Q_i
\label{er3}
\end{equation}
\begin{equation}
K=H-\frac{\partial\, F_1}{\partial\, t}
\label{er4}
\end{equation}
であればよい。これが本文の定理5-8の式(15)(16)に対応する式である。定理5-8以降の議論は全く同じように展開できる。ただ定理5-10の式(24)は今の場合
\begin{equation}
K\left(-\frac{\partial\, F_2}{\partial\, P},P,t\right)=H\left(q,-\frac{\partial\, F_2}{\partial\, q},t\right)-\frac{\partial\, F_2(q,P,t)}{\partial\, t}
\label{er5}
\end{equation}
となる。
(III) \(q,p\)が\(p,Q\)で表せるとき。
これは\(\det\left| \frac{\partial\, Q_j(q,p,t)}{\partial\, q_i}\right|\ne 0\)のとき可能である(定理1-5陰関数定理の系参照)。
\[
F=F_3(p,Q,t)-\sum_i p_iq_i
\]
とおく。あとの議論は上記(II)の場合と同じである。式(\ref{er3})(\ref{er4})に対応する式として
\[
\frac{\partial\, F_3}{\partial\, p_i}=q_i
\qquad \frac{\partial\, F_3}{\partial\, Q_i}=P_i
\qquad K=H-\frac{\partial\, F_3}{\partial\, t}
\]
をえる。また式(\ref{er5})に対応する式は
\[
K\left(Q,\frac{\partial\, F_3}{\partial\, Q},t\right)=H\left(\frac{\partial\, F_3}{\partial\, p},p,t\right)-\frac{\partial\, F_3(p,Q,t)}{\partial\, t}
\]
となる。
(IV) \(q,p\)が\(p,P\)で表せるとき。これは\(\det\left| \frac{\partial\, P_j}{\partial\, q_i}\right|\ne 0\)のとき可能である(定理1-5陰関数定理の系参照)。
\[
F=F_4(p,P,t)-\sum_ip_iq_i+\sum_iP_iQ_i
\]
とおく。あとの議論は上記(II)の場合と同じである。式(\ref{er3})(\ref{er4})に対応する式として
\[
\frac{\partial\, F_4}{\partial\, p_i}=q_i\qquad \frac{\partial\, F_4}{\partial\, P_i}=-Q_i\qquad K=H-\frac{\partial\, F_4(p,P,t)}{\partial\, t}
\]
をえる。また式(\ref{er5})に対応する式は
\[
K\left(-\frac{\partial\, F_4}{\partial\, P},P,t\right)=H\left(\frac{\partial\, F_4}{\partial\, p},p,t\right)-\frac{\partial\, F_4(p,P,t)}{\partial\, t}
\]
となる。
以上を表にすると表C-1となる。